没落令嬢のおかしな運命~餌付けしたら溺愛されるなんて聞いてません!~
「シュゼット令嬢こんにちは」
「こんにちは、アル様」
アル様は私の存在に気がつくと顔を上げてきらきらしい笑みを浮かべてくる。
ラナに言われたからなのか、アル様を見た瞬間に私の心臓がきゅうきゅうと締め付けられる。
私は呼吸を整えると、ワゴンからテーブルへお菓子をティーセットを移動させる。
するとアル様が私の様子を見るなり美しい眉をぴくりと動かした。
「なんだか顔が赤いけど、どうかしたの?」
「い、いえ。きっと厨房が暑かったのでそのせいだと思いますわ」
顔が火照っているのが自分でもよく分かる。けれど、体調が悪いせいではないというか、元凶はアル様にあるというか……とにかく熱ではないことをきちんと伝えた。
私の答えを聞いてホッとしたアル様はテーブルに置かれたお菓子へと視線を移す。
「今日はいつもとは違う趣向のお菓子みたいだね。なんだかとってもカラフル……これって野菜を使っているの?」
「どうして分かったんですか?」
「多分これは僕がファンだから言えることだけど、シュゼット令嬢がいつも作るものとは雰囲気が違ったから、すぐに分かっただよ」