没落令嬢のおかしな運命~餌付けしたら溺愛されるなんて聞いてません!~
顔を真っ赤にさせて突っ立ている私は端から見たら滑稽に違いない。
なのにネル君は心配そうに私の顔を覗き込んで声を掛けてくれる。
「お嬢様? あの、大丈夫ですか? 僕の気持ちは迷惑ですか?」
「め、迷惑じゃないわ。ネル君みたいな子に素敵な言葉を掛けてもらえてとても嬉しい」
可愛い男の子に『太陽みたいな存在』だなんて言われて悪い気はしないし、ネル君を愛でる一ファンとしては冥利に尽きる言葉だ。
ところがネル君は腑に落ちないといった様子で表情を曇らせた。
「もしかして、お世辞だと思ってますか?」
「……え?」
突然の質問に反応が遅れてしまう。
ネル君は私の手を掴むと自分の指と絡めるようにして握り締めてくる。
「僕は本気だよ。お嬢様だから自分の気持ちを正直に伝えてるだけ。僕はずっとあなたのスミレ色の瞳に映っていたいし、赤みを帯びた金色や白い肌に触れたいと思ってます」
私を射貫く真っ直ぐな眼差しに嘘偽りはなく、ただ大人の真似ごとをしたいというわけでもないようだった。
こんなに真剣な言葉は人生で一度も言われたことがなかった。ネル君から発せられた言葉は刺激的で。もうどんな顔をしていいのか、どう対処していいのか混迷を極めた私はとうとう顔を伏せてしまった。