没落令嬢のおかしな運命~餌付けしたら溺愛されるなんて聞いてません!~
「材料や調理器具がどこにあるか分かるかしら?」
「もちろんです! 休日に何度も調理器具のお手入れや厨房のお掃除も手伝ったのでどこに何があるのか分かってます」
その答えを聞いて私は「よし」と小さく頷いた。
「ネル君もこのお店の一員だものね。今からケーキづくりを進めるからサポートをお願いするわ」
「はいっ! それじゃあまずはお店のプレートをひっくり返してきますね」
元気よく手を挙げたネル君は、くるりと身を翻して店内へと駆けていく。
覗き窓から店内を確認すると、タイミングが良いことにお客様は一人もいない。
店内入り口に掛かっているプレートを裏返し、ロールカーテンを下ろしているネル君の姿を確認した私は作業台に戻ってケーキ作りに取り掛かる。
オーブンを温めている間に生地を作り、お店にある一番大きくて四角い型の中に流し込む。スポンジに穴が空かないよう空気抜きをしてから、温まったオーブンの中に入れた。
オーブンの蓋を閉めて焼き上がり時間を確認していると、慌ただしい足音とともにラナが血相を変えて戻ってきた。
「大変ですよう! いちごがっ、いちごがどこにもありません!!」