没落令嬢のおかしな運命~餌付けしたら溺愛されるなんて聞いてません!~
「ここにある植物は食べられるように無農薬で栽培しているの。スミレやパンジー、ヴィオラだってそう。お花でケーキを飾り付ければ可愛くて華やかな見た目に仕上がるわ!」
私の説明にネル君があっと声を上げて眉を上げる。
「僕、綺麗な花を選んで摘んできます。お嬢様は飾り付けの作業を進めていてください!」
「ありがとう。スポンジケーキの粗熱が取れる頃だし、お言葉に甘えさせてもらうわね」
花壇の前にしゃがんで花を選び始めるネル君の隣で私は気合いを入れ直す。
まずはスポンジの間に挟むクリーム作りだ。
今回は濃厚だけど後味がさっぱりとした酸味が特徴のクリームチーズを使ってチーズクリームを作る。材料はクリームチーズに砂糖、生クリーム、そしてレモン果汁……なのだが、冷蔵室へ行ってみるとレモンの箱の中が空っぽになっていた。
「大変、レモンが切れてる!」
ラナは買い出しからまだ帰ってこない。彼女が帰ってくるのを待っていては商会が閉まる可能性が出てくる。チーズクリームには絶対にレモン果汁が必要だ。
「暗くなる前にネル君には帰ってもらわないといけないからお遣いは頼めない。……やはりここは私がレモンを買いに行かないと」