没落令嬢のおかしな運命~餌付けしたら溺愛されるなんて聞いてません!~
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パティスリー前は点灯夫たちによって点された灯りが付いていて、その下でラナが私の帰りを今か今かと待っていた。
私の姿を見つけたラナは、泣き出しそうな表情でぱっと駆け寄ってくる。
「お嬢様ぁっ!! 一体どこへ行っていたんですか? 付き人もつけないなんて。もしもお嬢様に万が一のことがあったら、私は旦那様に顔向けできませんよう! って、どうして目が真っ赤なんですか!?」
私の顔を見てラナは始終狼狽える。
「……もしかして、うちのお嬢様に何かしましたか?」
ラナは胡乱な目で私の隣に立っているアル様を睨めつけた。
アル様は浮浪者から私を助けてくれたし、危ない目に遭わないよう私を守るようにして歩いてくれた。そんな親切な人を悪者扱いして欲しくない。
私はアル様を庇うようにラナの前に立った。
「レモンが切れていたから買い出しに行っていたの。それでネル君から事情を聞いたアル様が私を心配して迎えにきてくれたのよ。目が赤いのはゴミが入ってしまったからよ。彼のせいじゃないわ」
最後の部分は適当な理由を付けて誤魔化した。
襲われたなんて話をしてラナを悲しませたくない。
「強い風が吹いたせいだよね。僕は運良く目にゴミが入らなかったけど砂埃を巻き上げるような風だったから仕方がないよ」
私の話にアル様が合わせてくれたお陰で、ラナは納得したようだ。
顎を引いてから「そうでしたか」と言って、アル様への態度を軟化させる。それからレモンの茶袋を受け取ってお店の中へ入っていく。