没落令嬢のおかしな運命~餌付けしたら溺愛されるなんて聞いてません!~
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「ラナ、入り口のプレートを営業中にしてちょうだい。お店を始めるわよ!」
「はい、お嬢様!」
ラナはぱたぱたと小走りで入り口に向かうと、扉に掛かっているプレートを閉店中から営業中にひっくり返す。
いよいよ今日から私のパティスリーがオープンする。
店員を雇う余裕なんてないので従業員は私とラナの二人だけ。
ラナはカウンターで会計や商品の説明、ラッピングなどを担当する所謂販売スタッフだ。私はというと厨房でお菓子を焼く製造スタッフ。基本的に店内への顔出しはしない。
不安と期待が入り交じって胸がドキドキするので私は深呼吸をしてから一度心を落ち着かせる。
――一人でも多くの人を笑顔にできますように。
私は手を組んで祈り終えるとお菓子作りに精を出すために厨房へと戻った。