没落令嬢のおかしな運命~餌付けしたら溺愛されるなんて聞いてません!~


 この会場にいるのはもともとカリナ様と親しい人たちばかり。当然、彼女を擁護する言葉ばかりがざわめきの中から聞こえてくる。
 大切な婚約者を傷つけられたフィリップ様は顔を真っ赤にさせ、髪の毛を逆立てるようにして怒った。
「さっきから聞いていれば好き放題言いやがって。カリナを悲しませてただで済むと思うな」
「僕のお嬢様を傷つけて悲しませた人間に言われたくないね。あと僕は妄想なんて言ってない。事実を言っているだけ」
 肩を竦めるネル君は腕を組んで目を眇める。続いてカリナ様に近づくと哀れむような顔で言った。
「可愛い子ぶったって無駄だよ。あなたは別に可愛くないしどちらかというと不細工だ」
「なっ、私のどこか不細工ですって!?」
 不細工、と言われたカリナ様は涙を引っ込めると反論する。激昂する彼女はネル君に近づいて胸ぐらを掴むと声を荒らげて撤回するように叫ぶ。
 ネル君はカリナ様を無視して周囲に聞こえるように言った。

「王家の指輪には万が一盗まれた時のために追跡魔法が掛けられているから。そして魔法を掛けた僕なら指輪を見つけ出すことができる」
 今まで聞いたこともない言葉をネル君が発するとカリナ様の胸元についていた大ぶりのダイヤモンドのブローチがふわりと浮かんだ。
 突然の出来事にカリナ様は掴んでいたネル君の服を放すとたじろぐ。
 ――これってまさか魔法? ネル君は魔法使いだったの!?

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