没落令嬢のおかしな運命~餌付けしたら溺愛されるなんて聞いてません!~
「ライオット家は男爵といっても数年前まで貧乏で余裕がない生活を送っていたわ。修道院へ行って頭を下げてパンを分けてもらったことだってあるし、近所の貴族の屋敷へ行って使用人に残り物を分けてもらえないか頼み込んだことだってある。そうしてでも食べ物を持って帰らないと、お父様からは嫌味を言われ、お母様からは折檻される。……同じ貴族の子たちは毎日煌びやかに着飾って裕福な暮らしをしているのに、どうして私はこんなに惨めなの? もっと裕福になりたい。お金があれば幸せになれるのにって毎日嘆いたわ」
ライオット男爵家は金融業で成功を収めて裕福な生活を送っていると思っていたけれど、それまでは苦労が絶えなかったようだ。
自分も貧乏な暮らしをしてきているのでいろんな側面での苦労は容易に想像できてしまった。幼少期のカリナ様に胸が痛む。
「……そんな時、同じく貧乏で余裕のない生活をしているあなたの存在を知ったの」
カリナ様はここではないどこか遠くを見つめながら話を続けた。
「同じ境遇の人がいると知った時は嬉しかった。あなたなら惨めな私の気持ちに寄り添ってもらえると思ったから。だから私はあなたに会いに行った。……なのにあなたは、私と違ってとっても幸せそうだった」
カリナ様は恨めしそうに唇を噛みしめる。強く噛みしめた唇は切れ、血が滲んでいる。
「仲の良い家族に愛されているところを見て悔しくなったし、貧乏なのに婚約者もいて王子様とも幼馴染み。同じ貧乏でもあなたと私では持っているものに雲泥の差があった。そのせいでこっちは余計に惨めな気分になったわ。だから私と同じ地獄のような苦しみを味わわせてやりたくなった。正直フィリップ様のことなんて興味はないし、どうでもいい。婚約者を奪われてあなたがどんな顔をするのかが見たかっただけ。……なのに、あなたは何ごともなかったかのようにケロッとしてて、あろうことかお店まで始めて人生を謳歌している! どうして!? 私と同じだったはずなのに一体何が違うの!!」
「カリナ様……」