没落令嬢のおかしな運命~餌付けしたら溺愛されるなんて聞いてません!~
正直いうと私はカリナ様が思っているほど真っ当な人間じゃない。彼女のように貧乏なことを嘆きもしたし、お母様を失って悲しみにも暮れた。フィリップ様に婚約破棄されてそれなりに辛かった。
私も誰かを呪わずにはいられなかった状況はいくつもあった。
だけど、最終的にそうならなかったのは私を想ってくれるたくさんの人がいることに気づかされたから。
お店を始めたいと言い出した時、お父様は私を否定せずに温かく見守ってくれた。婚約破棄されたと知ってラナは私の代わりにたくさん怒ってくれた。
お店を始めてからはアル様やエードリヒ様が陰ながら支えてくれた。皆の存在に気づいていたからこそ、私は俯かないで前を向いて歩くことができた。
カリナ様にも想ってくれる人が側にいることを知って欲しい。その人に目を向けて欲しい。
私はカリナ様に近づくと彼女の両手を掴んだ。
「カリナ様、貧乏という境遇は似ていたのかもしれないけど初めから私とあなたには同じ部分なんて何もなかったの。人生を悲観するあまり周りが見えなくなってしまったようだけど、あなたにもあなたを想ってくれている人が側にいるのよ」
「そんな人……いるわけない」
「いいえ、いるの。あなたが気づかないだけで彼はずっとあなたを見守っている」
カリナ様へ非難が集中していく中、唯一変わらない眼差しを向ける人がこの会場に一人だけいる。