没落令嬢のおかしな運命~餌付けしたら溺愛されるなんて聞いてません!~


 仲間はずれにされたことに少し落胆していると、アル様に両肩を掴まれる。
「では王子殿下。私とシュゼット令嬢はこれで失礼しますね。後のことはお任せします」
「おい、私とシュゼットと言ったか? 帰りたいのであれば先に一人でかえ……」
 エードリヒ様の制止の言葉の途中で突然目の前の景色が変わった。
「ここは……」
 私はアル様から離れると辺りを見回した。そこは彼と初めて出会った森の中だった。

「とんだ醜聞騒ぎに巻き込まれて災難だったね。それもこれも僕の魔力が完全に戻らなかったせいだ。最後は無事に解決できて良かったけど、巻き込んでしまってごめんね」
「いえ、そんなことありません」
 秘宝の一件があったにせよ、遅かれ早かれカリナ様は私に何か仕掛けてきたはずだ。

 アル様は秘宝のこともあるのに私を心配してずっと気に掛けてくれていた。エンゲージケーキのアドバイスや暴漢から助けてくれたことを考えれば私の方が迷惑を掛けっぱなしで謝らなければいけない。
「大事なお仕事があったのに、いつも助けてくださってありがとうございました」
 私は改めてお礼を言うと、続けてずっと質問したかったことを口にした。

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