没落令嬢のおかしな運命~餌付けしたら溺愛されるなんて聞いてません!~


 そこで私は見た目も可愛いらしくて美味しいお菓子を作ればお客様に注目してもらえるのではないかと考えた。
 新規参入するお店が昔からあるお店と同じ土俵で戦うには、個性を出して差別化し、さらに試食して味を覚えてもらうことが一番名前を売るのに手っ取り早い。

 そして一般的にお菓子を嗜好品としているのは女性だ。彼女たちの舌を唸らせるだけでなく、見た目も楽しませることができれば経営を軌道に乗せることができると私は結論づけた。
 この三ヶ月はお店の開店準備と並行してお菓子の市場調査や分析も行っていた。

「見てこのいちごタルト。葉っぱの形をしたチョコレートと花の形をしたパイがのってて素敵!」
「こっちのガトーショコラもハートの形をした生クリームの上にドライフルーツがのっててカラフルだわ」
「こんなに可愛いケーキでお茶をしたら至福の時が過ごせそうよね。店員さん、今から言うケーキを買わせてください!」

 私の分析は当たったらしく、彼女たちは焼き菓子と数種類のケーキを買ってくれた。ラナが他の友人にも広めて欲しいとお願いすると彼女たちは心得顔で帰っていった。
 その後も程よい人数のお客様が入れ替わり立ち替わりやって来て、その度に可愛くて素敵だと感想を口にしながらお菓子を買って帰ってくれる。


 こうして用意していたケーキや焼き菓子の大半が売れていった。

< 23 / 238 >

この作品をシェア

pagetop