没落令嬢のおかしな運命~餌付けしたら溺愛されるなんて聞いてません!~
「ネル君は、アル様で大人だったんですか?」
「ああ、そうだね。実際は二十一だ。といってもここと島とじゃ時間の流れが違うから君からしたらもっと年寄りかもしれないけど」
「……どうしてずっと子供の姿を?」
大人だったのなら最初にそう説明してくれたら良かったのに。
可愛くてしかたがなかった少年は実のところ見目麗しい魔法使いの青年だった。
――私、失礼なことしていなかったかしら? だってずっと子供扱いしていたんだもの!!
少年だと思い込んでいたせいで手ずからお菓子を食べさせていたことや膝の上にのせて抱き締めていたことを思い出す。逆セクハラの数々がフラッシュバックすると、居たたまれない気持ちやら羞恥心やらでいっぱいになる。穴があったら入りたい。
思え返せば少年姿のアル様は私の行き過ぎた行動に困惑していた。最終的にはいつも私のお願いを聞いてくれていたけど。
私はアル様のことが好き。
どうしようもないくらい好きだって、やっと分かったのに自ら嫌われてしまうような行動ばかりしていた。
――嗚呼、これならアル様を好きだって自覚した時にこの想いを伝えておけば良かったわ。
そうすれば少しは逆セクハラという罪をミルクレープのように幾層にも重ねずに済んだはずだ。
どうして肝心な時にいつも何かしらの問題を起こしてしまうのか。