没落令嬢のおかしな運命~餌付けしたら溺愛されるなんて聞いてません!~


「ねえ、シュゼット令嬢。誤解しないで欲しいんだけど僕は君が命の恩人だから助けたんじゃないよ。君が愛おしくて堪らないから、悲しませたくないから支えるんだ。少年の姿で近づいたことはすまないと思ってる。結局僕は伯爵と同じで君を傷つけてしまった。ずっと本当のことを言わないで、騙してごめん」
 眉尻を下げて謝ってくるアル様に、私は彼の腕に手を添えて違うと否定する。

「私はあなたに傷つけられたとも騙されたとも思ってません。私の方こそごめんなさい。ネル君が子供だと思っていたから行きすぎた行動に出ていました」
 一瞬、アル様はきょとんとした表情を浮かべると続いて含み笑いをしながら顎に手を当てる。
「確かに大胆なことばかりされた気がするなあ」
「そ、その節は本当にごめんなさい! 大好きなネル君の可愛い姿を、笑顔を間近で見ていたいって思ったら止まらなくなってしまって……あっ」
 気が動転した私は本人を目の前にして下心満載な本音を漏らした。完全にやらかしている。墓穴を掘りまくっている私は自分に呆れると同時に頭を抱えた。

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