没落令嬢のおかしな運命~餌付けしたら溺愛されるなんて聞いてません!~
「凄いです、流石です! お嬢様はお菓子作りにおいて天賦の才をお持ちだとは思っていましたがここまで飛ぶように売れるなんて驚きですよう」
「褒めすぎよラナ。だけどこのままの勢いが継続できるよう頑張るわね」
本日最終分のケーキを取りに来たラナは感銘を受けた様子で私に店内の状況を報告してくれる。
経営に関しては伯爵夫人としてフィリップ様の仕事を補佐するために経済学に加え、経営学や商学なども勉強していたからそれが非常に役に立った。
可愛い見た目のケーキはお母様の教えのお陰だ。お母様はいつも「あなたらしいお菓子を作りなさい」と口にしていた。
恐らくそれは常識に囚われないお菓子を作れということを意味していたのだろう。その言葉のお陰で私は可愛い見た目のお菓子にたどり着くことができた。
――初日から上手くいったのはお母様の教えのお陰ね。経営の勉強だけじゃ周りのパティスリーと差別化できなくて埋もれてしまっていたはずだから。
私は天井を仰いで天国にいるお母様に感謝の念を抱いた。
再びドアベルが鳴ったのでラナはケーキがのったお盆を両手に持って店内へと戻っていく。私の方は片付けをするだけなので、どんなお客さんが足を運んでくれているのか観察するため、厨房と店内の間に設けられた小さなのぞき窓から中の様子を窺った。