没落令嬢のおかしな運命~餌付けしたら溺愛されるなんて聞いてません!~

08



 お店の扉に吊しているプレートを準備中に裏返してロールカーテンを下ろした後、私はネル君にお礼を伝える。
「昨日に続いて今日も手伝ってくれてありがとう。売り子をするのは大変だったでしょ?」
 私が尋ねるとネル君は首を横に振った。

「ううん、全然大変じゃない。というか、勝手にお菓子の説明をして、お嬢様は嫌じゃなかった?」
「嫌だなんてとんでもない。とっても感謝してるわ。あなたのお陰でお店の売り上げは順調なんだもの」

 ネル君が不安そうにこちらを窺ってくるので、私は同じ目線になるように膝を折って微笑んだ。私が本心から言ってると読み取ったネル君はほっと胸を撫で下ろす。

 ――ネル君がいてくれたらとても助かるわ。
 正直な話、従業員はラナだけでも充分助かってはいるけれど、ネル君がいてくれた方が心強い。……マスコット的な意味で。

「ネル君がお店を手伝ってくれたら良いのに……」
 深く考えるよりも先に口が動いていた。
 ネル君は目をぱちぱちとさせてからキョトンとした表情を浮かべる。

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