没落令嬢のおかしな運命~餌付けしたら溺愛されるなんて聞いてません!~
そんなことを思っているとネル君が私の腕を掴む。
「お嬢様、お嬢様のお菓子は誰が何と言おうととても美味しいの。そこに注がれた情熱も努力もすべて、食べる相手にはちゃんと伝わってるから。だから胸を張って。自信を持って」
「ネル君……」
なんだか身体の力がフッと抜けて軽くなったような気がする。
もしかしたら、私はフィリップ様に……家族以外の誰かにこう言った言葉をかけてもらいたかったのかもしれない。お父様や双子たち、それにラナを含む屋敷の者たちは私の努力を評価してくれるけれど、それは単なる身内びいきかもしれないという考えがずっとついて回っていた。
だからそれ以外の誰かに認めてもらえたことが心の底から嬉しい。
私は小さく息を吐くと真っ直ぐネル君を見つめた。
「ありがとうネル君。お陰で心が軽くなった気がするわ」
ネル君は目を細めてから頷いた。私の腕から手を離すと、もう片方の手に持っていたマカロンを鞄の中にしまう。