没落令嬢のおかしな運命~餌付けしたら溺愛されるなんて聞いてません!~
「――ところでお嬢様、そこにあるマカロンは新作ですか?」
尋ねられた私は手元にある緑色のマカロンに視線を落としてからにっこりと微笑んだ。
「ふふっ、当たり。まだ試作段階だけどピスタチオ味なの。一つ試食してみない?」
「わあ! 食べてみたいっ」
感激した様子で両手を合わせ、目をキラキラと輝かせるネル君があまりにも可愛らしくて私はへにゃりと表情を崩してしまう。
仕草や表情の一つ一つが愛らしくて、この世にこんなに可愛い生き物がいていいのかと疑ってしまう。お客様ではないけれど実は私もネル君の可愛さにメロメロで骨抜きにされているうちの一人だ。彼の可愛い反応がみたくて、ついつい甘やかしてしまう。
「はいネル君、お口を開けて」
私はピスタチオ味のマカロンを一つ摘まむとネル君の口元へと持っていく。
するとネル君は頬を真っ赤に染め上げた。照れる表情もまた可愛い。
「お嬢様……僕っ……」