没落令嬢のおかしな運命~餌付けしたら溺愛されるなんて聞いてません!~
こういうところはしっかりと男の子なのだろう。
照れて口を開くか戸惑っているネル君は潤んだ瞳で私とマカロンを交互に見た後、目を閉じてゆっくりと口を開く。
その瞬間、私の心臓がキュウゥッという音を上げた。
――か、可愛い~っ!! 何なのこの可愛い生き物は!?
たかだかマカロンを試食してもらっているだけなのに、食べる姿が親鳥から餌を求める雛鳥のように弱々しくて、この上なく守ってあげたいと感じる。
内心キュンキュンして身もだえしていると、口元を手で押さえながらマカロンを食べ終えたネル君が感想を言った。
「マカロンの間に入っているピスタチオのクリームが濃厚でとっても美味しいです」
「本当? 私はまだ食べていないんだけど明日発売しても大丈夫かしら?」
人差し指を口元に当てて考え込んでいると、ネル君が皿の上にのっているマカロンを一つ摘まむ。
「それならお嬢様も試食する必要がありますね。次は僕がお嬢様に食べさせる番です!」
「へっ?」