没落令嬢のおかしな運命~餌付けしたら溺愛されるなんて聞いてません!~
「はいっ、あーん!」
「……っ!?」
私の顔は火が噴いたように真っ赤になった。
このシチュエーションはいくらネル君が子供だといってもドキドキしてしまう。
身長差があるせいで、ネル君はつま先立ちをしてふるふると震えながら私の口元へとマカロンを運ぶ。その姿がいじらしくて私の乙女心が揺すぶられる。
「じゃ、じゃあ遠慮なく……!」
少しだけ腰を落とした私は頬に掛かった後れ毛を耳に掛けながら口を開く。
舌の上にマカロンがのると一口噛んだ。
外側のカリッとした食感や中のしっとりとした滑らかさは変わらないのに、なんだかいつものより甘く感じる。
――分量を誤って砂糖を入れすぎたのかしら?
そんなことをぼーっと考えていると、ネル君は私が囓ったマカロンをひょいっと自分の口に放り込んだ。
「うん。やっぱり美味しい。ごちそうさまです」
「ネ、ネル君!?」
一瞬だけだったけれど、ネル君から大人の余裕のようなものを垣間見た気がした。いつもとは違う雰囲気のせいで心臓が大きく跳ねると程なくして速度を上げ始める。