没落令嬢のおかしな運命~餌付けしたら溺愛されるなんて聞いてません!~
――どうしたっていうの? まさか、十二歳の男の子に私は邪な感情を抱いているの?
弟よりも幼い子に恋情を抱くなんて笑止千万。これはきっと勘違いに違いない。
自分の胸の上に手を置いて深呼吸を繰り返すと、私ははぐらかすように言った。
「んもう。ネル君は食いしん坊さんなのね。ピスタチオ味も詰めてあげるから持って帰ると良いわ」
私は新たに紙袋を一つ取って広げると、何個か中に詰めていく。
「――……子供扱いされるのは嫌だな」
マカロンのラッピングに気を取られていた私はネル君の呟きをよく聞いていなかった。
「ど、どうしたの? 何か言った?」
「ううん、何でもないの。マカロンありがとうございます。お疲れ様でしたっ」
ネル君はピスタチオ味のマカロンが入った包みを受け取ると、くるりと背を向けて勝手口から足早に出ていってしまった。
残された私はまだ顔の熱っぽさを感じながら首を捻るばかりだった。