没落令嬢のおかしな運命~餌付けしたら溺愛されるなんて聞いてません!~

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 パティスリーを開店させてから三ヶ月が過ぎた。

 売り上げは当初の予想を上回り、連日多くの女性客で賑わいを見せている。特にネル君目当てのお客様は多く、彼が出勤する時間帯はとても混雑する。

 お陰でいつも閉店時間になる頃には、ほとんどの商品が売り切れていた。
 また最近はうちの焼き菓子をお茶会に使いたいと貴族のお屋敷から注文も受けるようになった。

 要望を聞いたり、量をたくさん作るのは大変だけど、私はこの忙しさが心地良くて満足している。
 何ならフィリップ様のために心を砕いていたあの頃よりも今の方が生き生きしていると思う。

「ここ数年で今のお嬢様が一番幸せそうです。あのクソ男と婚約している間は常に眉間に皺を寄せていて怖かったですもん」
 客足が一段落ついたのでショーケースへケーキを補充していると隣にやって来たラナがそんなことを言い出した。
「まあっ、そんなに怖い顔をしていたの?」

 驚いた私は思わず動かしていた手を止めてラナに顔を向けた。
 四六時中怖い顔をしている私に仕えるのはさぞやりづらかっただろう。
「特に一年前、クソ男が女狐に現を抜かすようになった頃は酷かったです。まあ、ストレスが重なったことが原因だとは思いますけど」

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