没落令嬢のおかしな運命~餌付けしたら溺愛されるなんて聞いてません!~
小ぶりでまん丸なデイジーの花束を受け取って感銘を受けているとネル君が口を開く。
「商会でお花を卸している人から聞いたんだけど、デイジーの名前の由来は『太陽の目』から来ているらしいの。それでね、僕にとっての太陽はお嬢様だなって思ったからこれを贈りたくなったんだ」
「えっ?」
私は一瞬なんと言われたのか分からずにキョトンとしてしまった。
ワンテンポ遅れてまだ十二歳くらいの少年に口説かれたことに気づくと私は目を見開く。
どこでそんな言葉を覚えてきたのかは分からないけれど、美少年のネル君に言われて嫌な気はしない。寧ろ告白めいた言葉に私は完敗していた。
――ネル君ったら早く大人になりたくてうずうずしているのね。私で練習するのは良いけど、ちょっぴりドキドキしちゃうじゃない。
前回同様に心臓はドキリとしてしまうがこの間のような動揺は私にはなかった。だってネル君が私を本気で口説きに掛かっている訳ないことくらい火を見るより明らかだから。
私は花束を受け取ると顔を近づけて目を細める。
「ありがとうネル君。ネル君にそんな風に言われて私は幸せだわ。このとっても可愛いお花は店内に飾らせてもらうわね」
私が口元を緩ませているとネル君が真顔で話を続ける。
「お嬢様は僕をいつも温かく迎え入れてくれて、太陽みたいに眩しくて素敵なの。僕は本気でお嬢様のことを……」
そこで丁度、チリンチリンとドアベルが鳴った。