没落令嬢のおかしな運命~餌付けしたら溺愛されるなんて聞いてません!~

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 雨は小雨になったけれど、おやつ時になっても来店するお客様は少なかった。
 店内のショーウィンドウから街行く人の様子を窺ってみてもその数はいつもよりまばらだ。ネル君には土砂降りの中お店に来てもらったけれど、活躍する場はなかった。

 これ以上いてもらっても貴重な時間を奪ってしまうだけだし、また本降りになったら大変だと判断した私はネル君を早めに家へ帰すことにした。
「今日は折角来てもらったのにごめんね。お天気が不安定だから今のうちに帰って。今日のお菓子はネル君の好物をたくさん詰めておいたわ」

 ネル君はお菓子の包みを受け取ると鞄の中にしまう。
「僕は少しでもお嬢様の役に立ちたいだけだから気にしないで。明日もよろしくお願いします」
 礼儀正しく頭を下げたネル君は傘を広げて帰って行く。


 私はネル君を見送った後、踵を返して店内にいるラナに声を掛けた。
「今日はもうお客様も来ないだろうから早めにお店を閉めましょうか」
 時間を持て余していたラナはお店の棚や窓を雑巾で拭いて綺麗にしてくれていた。

「分かりました。……あっ、それなら私は材料の注文をしに商会へ行ってもいいですか? きっと商会の方もいつもより混んでいないと思うんです」
「確かにその可能性はあるでしょうね。待ってて。注文リストを渡すから」
 私はあらかじめ紙にまとめていた注文リストをラナに手渡した。

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