没落令嬢のおかしな運命~餌付けしたら溺愛されるなんて聞いてません!~
「作り手としてこれ以上にない嬉しいお言葉です。毎日準備してお待ちしていますね」
「……店内に半個室のイートインスペースがあって本当に良かった」
「そうですね。周りの目を気にすることなく楽しい一時を過ごせると思います」
ショーウィンドウが可愛らしいので入りにくいし、店内の販売スペースも長居しにくい。けれど、イートインスペースでならゆっくり過ごすことができる。
私が青年の意図をそう捉えて返事をすると彼はテーブルに手をついてゆっくりと立ち上がる。
目を細めてじっと私のことを眺めると、やがて顔を私の耳元に寄せてきて吐息混じりに言った。
「半個室だから、今日みたいにあなたと二人きりでゆっくりお喋りできるよね?」
「……ふえっ!?」
恋人に言うような甘い声音に私の心臓は嫌でもドキドキしてしまった。そんな言い方をされたら勘違いしてしまう。
フィリップ様と婚約していたとはいえ、大した恋情も抱いていなかったし恋愛的なことを何もしていなかったので私の恋愛偏差値は二十歳という年齢に反してとても低い。
どう答えて良いのか分からなくて言葉を詰まらせていると、青年が私から離れてくすりと笑った。