没落令嬢のおかしな運命~餌付けしたら溺愛されるなんて聞いてません!~
02
そしてふと、フィリップ様の隣に立っていたカリナ様を思い出す。
長い髪は栗色で、小動物のようなつぶらな瞳は翡翠色をしている。きめ細やかな白い肌にふっくらとした頬はバラ色。ぷるんとしている唇は瑞々しい。
愛らしさも相まって見る人の庇護欲をかき立てる容姿をしている。
一方で私はというと、パーツそれぞれは整っているものの、全体的に平々凡々な顔立ちで可愛らしさとは無縁だ。肌の白さは彼女と同じだが真っ直ぐな長い髪は赤みを帯びた金色でアーモンドの形をした目はスミレ色をしている。主張の激しい色合いのせいで余計に顔全体がぼんやりとしてしまう。
だから勉学の合間を縫って、髪型やメイクを研究したり、ファッションの勉強をしたりとたゆまぬ努力を重ねてきた。
いつかフィリップ様が私に振り向いて優しくなってくれますように――ただそれだけを願って。
だけどその努力はすべて無駄だった。私が頑張っている間に、フィリップ様はカリナ様に現を抜かしていたのだから。
――浮気されていたことに気づかないなんて……私ったら本当に馬鹿ね。
恋愛に疎いにも程がある自分に呆れ返って深い溜め息を吐くと顔を伏せる。