没落令嬢のおかしな運命~餌付けしたら溺愛されるなんて聞いてません!~


 これまで数々の国を転々としてきたが、お菓子に情熱を注ぐ貴族令嬢など見たことも聞いたこともない。
 アルがシュゼットのお菓子を口にしたのは偶然によるものだった。だが、その時の衝撃は未だに忘れられず、こうして毎日足を運ぶまでになっている。


 シュゼットの作り出すお菓子はどれも美味しい。菓子職人と遜色がないと言っても過言ではないし、何よりも彼女のお菓子からは愛情を感じられる。
 お菓子は可愛い見た目で斬新なものもあるけれど、きちんと美味しくなるよう工夫が凝らされている。

 シュゼットからお菓子のコンセプトを聞いていていると、どうしてその形状にしたのかがよく分かるし、普段とは違うお菓子の見方ができるので面白い。これまで食べ物には無頓着だったけれど、作り手の思いがこもっていることを知ってしまうとじっくり味わうようになった。

 ――たかがお菓子、されどお菓子。甘く見ていると痛い目に遭う。

< 80 / 238 >

この作品をシェア

pagetop