没落令嬢のおかしな運命~餌付けしたら溺愛されるなんて聞いてません!~
「そう、それは仕方がないわね」
振られてしまった私は肩を落としつつも、顔を伏せるネル君の可愛さにきゅうっと胸を締め付けられた。
――嗚呼、しょんぼりするネル君可愛い! だけどこのままだと私がネル君不足に陥っちゃう!!
一緒にいたいだなんて無理強いはできない。だけどあと少しだけ……ほんの少しだけでいいから一緒にいて欲しい。
そこでふと、私は短時間でネル君から元気をもらう名案を思いついた。
「ネル君ちょっといいかしら?」
私は丸椅子に腰を下ろすとネル君にこちらに来るように手招きする。
「何ですか?」
「背中を向けて私の前に立ってくれない?」
怪訝そうに首を傾げるネル君だが、素直に側までやって来て私に背中を向けてくれた。
そして――。
「えいっ!」
私はネル君の脇の下に手を射し込むと、彼の身体を持ち上げて膝の上にのせた。お腹の辺りに手を回して落ちないようにぎゅっと抱き寄せる。
「お嬢様っ!? 離してください。こんなの逆セクハラですっ!!」
突然抱擁されたネル君は素っ頓狂な声を上げ、下ろすようにジタバタと暴れ始めた。子供扱いされることを嫌厭するネル君とってこのシチュエーションは屈辱だろう。だけど、今の私にはこれが必要だった。
私はネル君の身体を密着させるように抱き締めると落ち着くように頭をぽんぽんと軽く叩いた。