クズな王子はお断りします
◯陽夏の部屋
陽向は央士をリビングから連れ出して、自分の部屋に連れてくる。
陽夏「央士くん!どういうつもりで、あんなこと言ったの?」
央士「あー、俺らの親世代には金持ちのお坊ちゃんより、苦労している男の方が好感度高いだろ?だから貧乏を隠す必要ないかなーって」
陽夏「いやいや、家政婦のバイトしていることじゃなくて……わ、私と、お、お付き合いしてる……とか」
央士「あー!あれな!…… お前でもいいかなって」
陽夏「はい?」
央士「俺、お前でもいいって言ってんだよ」
陽夏「……言ってる意味が全く分からないんだけど」
央士「俺が、お前と付き合ってやってもいいって言ってんの」
口角を上げて自信ありげに微笑む央士。
その表情からは、冗談ではなく本気で言ってるように感じる。
陽夏(……本気?……なんでそんなに上から目線なの?)
央士「お前の父親も一応社長だし?まあ、最初の計画の財閥の娘には到底及ばないけどな」
陽夏(……央士くんって、ナチュラルに失礼だな、悪気はないのが余計に腹が立つ)
陽夏「……」
央士「……まあ、百歩譲ってお前の容姿が普通なところは目を瞑ってやるよ?」
陽夏(……私に対してだいぶ失礼なことを言ってるんですけど)
央士は申し訳なさそうな雰囲気が微塵も感じられないので、どうやら本気で言っているらしい。
陽夏「ごめんなさい」
一切迷うことなく断る陽夏の言葉が、信じられないとでも言うように、央士は目を見開いて驚いている。
央士「……は?お前、なんて言った?」
陽夏「だから、ごめんなさいって」
央士「お前、よく見ろよ?告白してやってるの、俺だぞ?」
陽夏(いやばっちり見えてますけど。どこからその自信がくるんだろう。央士くんは『王子くん』と、この学園で異常にモテはやされ過ぎて、人としての感覚がおかしんだ)
陽夏「あのさ、央士くんの本性や、逆玉狙いなことを知ってるのに、好きになるはずないでしょ?」
央士「だったら……お前はどんな男がいいの?」
陽夏「え、うーんと、優しくて……誠実で……私のことを好きで……」
央士「ふーん……俺より良い男なんていないと思わない?」
央士は陽夏の顔を覗き込む。
間近で見る央士の顔は、あまりにも綺麗で問いかけに頷いてしまいそうになる。
陽夏(……ダメだ!イケメンな顔に惑わされちゃダメだ)
ブンブンと顔を左右に大きく振る。
央士「まあ、お前の両親は俺のこと気に入ってくれたし? 今のところは家政婦と雇用主の関係で我慢してやるよ」
相変わらず上から目線で話す央士。
央士「あー、あと……ベッドのある部屋に男連れ込むことがどういうことか知ってる?」
陽夏「へ?」
陽夏が顔を上げると、すぐ目の前には綺麗な央士の顔が。
央士「俺も男だってこと……忘れんなよ?」
央士は意地悪なしたり顔で微笑む。そんな央士に胸が高鳴る陽夏。
王子の仮面を被った央士は両親公認の家政婦になってしまった。
――そんな彼が強気に迫ってくるので陽夏の心は掻き回される。