クズな王子はお断りします
第六話
〇教室(ホームルーム前・朝)
静まり返るクラスメイト。
央士と陽夏と徳川に視線が集中する。
徳川「あー、違う違う。王子くん、なんか勘違いしてない?俺は百瀬さんのお父さんの会社のことで話あるだけ」
央士「へ?……な、なんだ、そうか」
央士は掴んでいた陽夏の腕を離して、顔を真っ赤にさせる。気まずそうに頭をポリポリとかいた。
徳川「……百瀬さんは王子くんのものなの?」
央士「ちっ、ちがう!ちがくねえけど、貸してやるよ!」
陽夏「貸してやるって……私はものじゃないのに」
モノ扱いされて嫌な気持ちになるはずが、央士に引き留められたことに嬉しさを感じる陽夏。
〇廊下
央士は教室に残り、陽夏は徳川と廊下に出る。
徳川「びっくりしたー。学園の人気者の王子くんは、百瀬さんと付き合ってたんだ?」
陽夏「ち、違うよ?付き合ってないよ」
徳川「ふーん、まあいいけど」
陽夏「……あの、話って?」
徳川「あー、俺の親父の会社が、百瀬さん家の会社と提携結ぶみたいなんだ。……なにか聞いてない?」
陽夏「そうなんだ?……パパは会社のことはあまり喋らない人だから……」
陽夏の父は仕事の話題を家庭に持ち込まないタイプの人だった。
徳川から聞いた話も、初めて聞いた話だった。
徳川「ふーん、そっか。……百瀬さんは、何も知らないんだな……」
徳川「……世間知らずな親子で助かるな(陽夏には聞こえない小声で呟く)」
陽夏「え、ごめん、なんて言った?」
徳川の後半の言葉が聞き取れなくて、陽夏は聞き返す。
徳川「……なんでもないよ」
徳川は満面の笑みを浮かべる。
笑っているけど、目の奥が笑っていないような気がして少し怖い。
陽夏(……?)