可愛い彼と美しい彼女
落ち込んだ私を見兼ねたゆりかは、私を連れて最寄駅のショッピングセンターに連れてきた。


「麗華がしたいこと全部しようよ」


そう言った救世主ゆりかと私は3、4時間程度ショッピングをしたり、カフェでゆっくりくつろいだり、久しぶりに気分転換という気分転換ができた。



「やっぱり、持つべきものは友でした....。」


「ふふ、ひとまず麗華が明るくなってよかった。あ、思ったんだけどさ」


「ん?」


「もし、次そのお姉さんとやらに会えたらさ、ちゃんと話したら?」



「は、話す......?」




この状況において辞書になかった話す、という言葉を聞いて固まる。



話す.......ってなんだっけ。



「こんだけ会えないだけで落ち込むんだから麗華。ちゃんと、いつも見てるんですけどって言わないとじゃない?」


「へ........そ、それじゃあただのストーカーじゃん」


「しょうがないよ、ただのストーカーなんだから」


「うぅ...」


やっぱり、ゆりかはゆりかのままなのかもしれない。


.


“お迎えはどう致しますか?”

と田所からの連絡。

“もう少しカフェにいそうだから、近いし、歩いて帰るよ”


と送ると、一瞬で


“了解いたしました”


と帰ってくる。


田所は物心ついた頃から一緒にいるけど、プライベートというか素の田所ってどんな感じなんだろうーーーー。





「んじゃあ、私迎えにきてもらうから、ここで。」


「ん、今日は本当にありがとね、ゆりか」



とお互い別れを告げる。



ここから最短で歩けば10分程で着くのだが、なんだか遠回りをしたくなって海に面している大幅に距離が長いルートを選択する。



私が住むこの場所は、住宅地が多く集まり、特に“金持ち”と言われる人たちの家がたくさん建っているところでもあったが、私が好きなのは海が近くにあること。


幼い頃から海が好きで、よく遊びに行っていたっけ。



久しぶりで胸が弾む思いがする。



革靴の中に砂が入ってしまわないか、心配になっていたが、海を前にすればそんな思い一瞬で消えて、目の前の海に精一杯になる。



「やっぱ、綺麗だな」


もう18時を回る空は薄暗くて、星が出てきている。


でも相変わらず海は綺麗で。


そう独り言を呟いて、海沿いを歩く。




心が少しずつ浄化されているような気持ちになって、海に身を任せる。



ぼーっと歩いていると、70メートル程先に人影を見つける。



この時間に珍しいなぁなんて、また呑気に歩き続けていると、私の足が反射的に止まる。



人影との距離はきっと40メートルぐらい。


影の輪郭が鮮明になっていく。



茶色くて、艶がかかった髪。
小さくて華奢な顔。
スラッとしているスタイルよさ。 



“お姉さん”だ、そう確信するのに時間はかからなかった。









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