吸血鬼の旦那様は私の血よりも唄がお好みのようです ~婚約破棄されましたが、優しい旦那様に溺愛されながら幸せの唄を紡ぎます~
エピローグ 二人の輝く未来へ
調印式から数か月がたったある日、オースティン公爵領にある大きな教会の控室にアナスタシアの姿があった。鏡の前で両の目を閉じて、きめ細やかな刺繍が施された純白のマリアベールを頭に優しくかけてもらっていた。
「アナ様、これで準備は整いました。すごく……お綺麗ですっ」
「ありがとう、メイ」
アナスタシアは立ち上がると、鏡の前に映る純白のウェディングドレスに身を包んだ自分を見つめる。この日の為に王都にあるお抱えの服飾店で仕立てたもので、ウェストの切り替えから裾に向かいスカートが大きくふんわりと膨らんだスタイルのドレスだ。
アナスタシアが身に纏うことによって華やかでありながら、愛らしさも際立ち見る者を釘付けにするほどの美しさだ。胸に輝くネックレスやイヤリングもその美しさに拍車をかけていた。
その様子を見ていたアーヴェントの母親であるレナもとても嬉しそうな表情を浮かべながらそっと純白に身を包んだアナスタシアへと声を掛ける。
「本当に綺麗だわ、アナスタシア。私の用意させてもらったベールもとてもよく似合っているわ」
振り返るとアナスタシアがお礼の言葉を口にする。
「レナ様……いえ、お義母様。本当に素敵なベールをありがとうございます」
「いいのよ。我が子の大切な婚約者……いえ、もう妻になるのね。そんな貴方のための物だもの」
ウェディンググローブを嵌めたアナスタシアの両手をレナが優しく握る。その瞳は淡く潤んでいた。アナスタシアは青と赤の両の瞳と共に笑顔を浮かべる。
そんな中、控室の扉がノックされる。メイが扉を開けて、用件を聞く。
「アナ様、そろそろお時間だそうです」
「ええ、わかったわ」
「それじゃ、会場で待っているわね」
「はい。お義母様」
レナは先に控室を後にする。残されたアナスタシアはもう一度鏡の中に映る自分の姿を見つめる。彼女は柔らかく微笑んだ。
控室から出ると会場までの廊下をゆっくりと歩いていく。その先に純白に着飾ったアーヴェントの姿があった。いつもより更に凛々しく、素敵にみえた。
「アーヴェント様、お待たせ致しました」
深紅の両の瞳が優しくアナスタシアを映す。
「とても綺麗だ……こんな素敵な女性を妻に出来る俺は世界一の幸せ者だな。今すぐにでも抱きしめてしまいたいくらいだ」
その言葉にアナスタシアは頬をうっすらと赤める。
「にゃ。旦那様、そんなことをしたら大事なドレスがシワになってしまいますよっ」
メイに釘を刺されたアーヴェントは軽く笑みを浮かべる。アナスタシアもまた口元に手を当てて笑ってみせた。
「さて、では行こうか」
「はい」
アーヴェントから差し出された手をアナスタシアはそっと握り、彼の腕に手を掛けた。そして会場までの廊下を共に歩いていく。その後ろにはメイが続く。
大きな扉の前に二人が立つと、両脇にいた教会の者達が扉を開けてくれた。扉が開かれると同時に沢山の拍手と歓声が聞こえてくる。正装に身を包んだゾルンやラスト、フェオル、アルガン、ナイト、グリフ、グラトンの姿もあった。ケネスやこれまで出会った人達が温かく迎えてくれた。
その中に、再びリチャードの姿になったレオの姿もあった。後から聞いた話だが、シリウス王に許可を得て特別に参列したのだという。
二人はゆっくりと一歩ずつ、神父が待つ場所へと進んでいく。アナスタシアには不安な気持ちなど微塵もなかった。何故なら、隣には愛するアーヴェントがいるからだ。神父の前までくると誓いの言葉を交わす。そしてこの日の為に作っておいた指輪が差し出された。その指輪にはアナスタシアの両の瞳と同じ青と赤の色をしたあの宝石が使われていた。
指輪にアーヴェントは永遠の愛を誓う。そしてその指輪をアナスタシアの左手の薬指に優しく通した。アナスタシアも対となる指輪をアーヴェントの指に通す。するとアーヴェントはアナスタシアのベールに手を掛け、そっと後ろに降ろす。青と赤の両の瞳、そして深紅の瞳の中に互いの姿が映し出されていた。
互いの名を口にする。
愛しさが言葉になって紡がれる。
「アーヴェント様」
「アナスタシア」
「私は貴方を心から愛しています」
「ああ、俺もだ。これから先、永遠にお前を愛し続けると誓うよ」
軽く抱き寄せられたアナスタシアは両の瞳をそっと閉じると、互いの唇が重なる。幸せが二人を包み込んでいた。
それから式は終わりを迎え、参列した者達は先に教会の外に出た。アナスタシアとアーヴェントが後から続いて教会の外に出ると、そこには更に沢山の人達の姿があった。領主であるアーヴェントとその妻であるアナスタシアを一目見ようと領民たちが集まって来ていたのだ。
「みんな、私達の幸せを祝ってくれているのね」
沢山の拍手と歓声が二人を祝福する。二人はその光景を一生忘れはしないだろう。そして手渡されたブーケをアナスタシアはそっと青く澄んだ空に投げ込んだ。多くの女性たちが我先にと投げられたブーケに手を伸ばす。
ちょうどその時、押されたメイがその場に転ぶ。それを隣にいたリチャードが優しく支えると投げられたブーケはメイの手の中に収まったのだった。目を瞬いてみせるメイの姿をアーヴェントとアナスタシアは微笑みながらみつめていた。
アナスタシアは目の前に広がる幸せな光景を青と赤の両の瞳に映す。そして隣に並んでいるアーヴェントに声を掛けた。
「アーヴェント様……これからずっとずっと一緒にいてくださいね」
「ああ。約束するよ、アナスタシア」
二人は再び、口づけを交わす。
同時に教会の鐘が祝福の音を奏でた。
その音はどこまでどこまでも響き渡るのだった。
このお話は想い合う二人が明るい未来を手に入れた唄のように優しく甘い恋の物語。
「アナ様、これで準備は整いました。すごく……お綺麗ですっ」
「ありがとう、メイ」
アナスタシアは立ち上がると、鏡の前に映る純白のウェディングドレスに身を包んだ自分を見つめる。この日の為に王都にあるお抱えの服飾店で仕立てたもので、ウェストの切り替えから裾に向かいスカートが大きくふんわりと膨らんだスタイルのドレスだ。
アナスタシアが身に纏うことによって華やかでありながら、愛らしさも際立ち見る者を釘付けにするほどの美しさだ。胸に輝くネックレスやイヤリングもその美しさに拍車をかけていた。
その様子を見ていたアーヴェントの母親であるレナもとても嬉しそうな表情を浮かべながらそっと純白に身を包んだアナスタシアへと声を掛ける。
「本当に綺麗だわ、アナスタシア。私の用意させてもらったベールもとてもよく似合っているわ」
振り返るとアナスタシアがお礼の言葉を口にする。
「レナ様……いえ、お義母様。本当に素敵なベールをありがとうございます」
「いいのよ。我が子の大切な婚約者……いえ、もう妻になるのね。そんな貴方のための物だもの」
ウェディンググローブを嵌めたアナスタシアの両手をレナが優しく握る。その瞳は淡く潤んでいた。アナスタシアは青と赤の両の瞳と共に笑顔を浮かべる。
そんな中、控室の扉がノックされる。メイが扉を開けて、用件を聞く。
「アナ様、そろそろお時間だそうです」
「ええ、わかったわ」
「それじゃ、会場で待っているわね」
「はい。お義母様」
レナは先に控室を後にする。残されたアナスタシアはもう一度鏡の中に映る自分の姿を見つめる。彼女は柔らかく微笑んだ。
控室から出ると会場までの廊下をゆっくりと歩いていく。その先に純白に着飾ったアーヴェントの姿があった。いつもより更に凛々しく、素敵にみえた。
「アーヴェント様、お待たせ致しました」
深紅の両の瞳が優しくアナスタシアを映す。
「とても綺麗だ……こんな素敵な女性を妻に出来る俺は世界一の幸せ者だな。今すぐにでも抱きしめてしまいたいくらいだ」
その言葉にアナスタシアは頬をうっすらと赤める。
「にゃ。旦那様、そんなことをしたら大事なドレスがシワになってしまいますよっ」
メイに釘を刺されたアーヴェントは軽く笑みを浮かべる。アナスタシアもまた口元に手を当てて笑ってみせた。
「さて、では行こうか」
「はい」
アーヴェントから差し出された手をアナスタシアはそっと握り、彼の腕に手を掛けた。そして会場までの廊下を共に歩いていく。その後ろにはメイが続く。
大きな扉の前に二人が立つと、両脇にいた教会の者達が扉を開けてくれた。扉が開かれると同時に沢山の拍手と歓声が聞こえてくる。正装に身を包んだゾルンやラスト、フェオル、アルガン、ナイト、グリフ、グラトンの姿もあった。ケネスやこれまで出会った人達が温かく迎えてくれた。
その中に、再びリチャードの姿になったレオの姿もあった。後から聞いた話だが、シリウス王に許可を得て特別に参列したのだという。
二人はゆっくりと一歩ずつ、神父が待つ場所へと進んでいく。アナスタシアには不安な気持ちなど微塵もなかった。何故なら、隣には愛するアーヴェントがいるからだ。神父の前までくると誓いの言葉を交わす。そしてこの日の為に作っておいた指輪が差し出された。その指輪にはアナスタシアの両の瞳と同じ青と赤の色をしたあの宝石が使われていた。
指輪にアーヴェントは永遠の愛を誓う。そしてその指輪をアナスタシアの左手の薬指に優しく通した。アナスタシアも対となる指輪をアーヴェントの指に通す。するとアーヴェントはアナスタシアのベールに手を掛け、そっと後ろに降ろす。青と赤の両の瞳、そして深紅の瞳の中に互いの姿が映し出されていた。
互いの名を口にする。
愛しさが言葉になって紡がれる。
「アーヴェント様」
「アナスタシア」
「私は貴方を心から愛しています」
「ああ、俺もだ。これから先、永遠にお前を愛し続けると誓うよ」
軽く抱き寄せられたアナスタシアは両の瞳をそっと閉じると、互いの唇が重なる。幸せが二人を包み込んでいた。
それから式は終わりを迎え、参列した者達は先に教会の外に出た。アナスタシアとアーヴェントが後から続いて教会の外に出ると、そこには更に沢山の人達の姿があった。領主であるアーヴェントとその妻であるアナスタシアを一目見ようと領民たちが集まって来ていたのだ。
「みんな、私達の幸せを祝ってくれているのね」
沢山の拍手と歓声が二人を祝福する。二人はその光景を一生忘れはしないだろう。そして手渡されたブーケをアナスタシアはそっと青く澄んだ空に投げ込んだ。多くの女性たちが我先にと投げられたブーケに手を伸ばす。
ちょうどその時、押されたメイがその場に転ぶ。それを隣にいたリチャードが優しく支えると投げられたブーケはメイの手の中に収まったのだった。目を瞬いてみせるメイの姿をアーヴェントとアナスタシアは微笑みながらみつめていた。
アナスタシアは目の前に広がる幸せな光景を青と赤の両の瞳に映す。そして隣に並んでいるアーヴェントに声を掛けた。
「アーヴェント様……これからずっとずっと一緒にいてくださいね」
「ああ。約束するよ、アナスタシア」
二人は再び、口づけを交わす。
同時に教会の鐘が祝福の音を奏でた。
その音はどこまでどこまでも響き渡るのだった。
このお話は想い合う二人が明るい未来を手に入れた唄のように優しく甘い恋の物語。