緋色の徴(しるし) リリカとサリエル(魔法の恋の行方シリーズ11)

ブーケトス

緋色の徴(しるし)・サリエルとリリカ・魔法の恋の行方・シリーズ12

<ブーケ・トス>
新郎新婦のグルシアとアレクサンドラが、教会の正面玄関から出て来た。

両脇に人々が集まり、二人に向けて、米や花びらを撒き続ける。

階段下でアレクサンドラが、急に立ち止まった。

「どうした?」

グルシアが聞くと、
アレクサンドラは、いきなり自分の手のブーケを、力いっぱい大空に投げ上げた。

キャァアアーーー

参列の女性たちの歓声、
それぞれに、つかもうとする手が上がる。

しかし、ブーケは、とんでもなく遠い所に投げられていた。

白いリボンが細い雲のようにたなびく。

塀の脇の大木の菩提樹に寄りかかる、一人の女の腕にブーケが、
スポッと収まったのだ。

赤く少し厚めの唇、茶色の毛皮のコート、太ももまでスリットの入ったボディコンシャスなセクシーなドレス、細く高いピンヒールの靴・・

明るい茶色の髪を縦ロールに波を打たせて、華やかな整形風美人と言える。

大魔女のリリカが、その百合の
ブーケを腕に抱えていた。

目を白黒させて、ひどく困った様子で、周囲をキョロキョロしている。
そして、あわてて菩提樹の幹に隠れた。

< 1 / 52 >

この作品をシェア

pagetop