緋色の徴(しるし) リリカとサリエル(魔法の恋の行方シリーズ11)
「大丈夫だよ。ちゃんと話せばわかってくれるから」
鉢植えの後ろに腕を伸ばして、
何かをズルズルと引っ張った。
尻尾を引っ張られて出てきたのは、茶色の猫だった。
猫はおびえているのか、耳はぴったりと伏せられて、体が強張っている。
アレクサンドラが、何とか固まっている猫を抱っこした。
「ダーリン、リリカだよ」
リリカ・・リリカ・・?
確か、アレクサンドラのライバルで、嫌がらせをした大魔女だ。
グルシアは、猫に向かって聞いた。
「お前は大魔女だな。
どうやって、ここに入って来られた?」
この建物は天界の結界が張り巡らされており、邪悪なものは入ることができない。
「えーーー、アタシが抱っこしてきたけど」
アレクサンドラが代わりに、困った顔をして答えた。
「ダーリン、コワイ顔しないでぇ・・
リリカは話をしに来ただけだから」
「害をなすわけではないのか」
「相談があって来ただけだよ」
猫は、ぴょんとアレクサンドラの胸から飛び降りた。
「アレクサンドラの腹には、アンタの子どもがいるんだにゃ。
ここで、何かしでかしたら、
あんたは黄金の剣で殺すだろうにゃっ!」