緋色の徴(しるし) リリカとサリエル(魔法の恋の行方シリーズ11)
式が終わり、新郎新婦は、教会の正門につけられていた車に乗り込んだ。
それを見送った、参列者たちは三々五々、散っていくのが見える。
「はぁーー、なんじゃ、これは?最後のいやがらせかぁ?」
リリカはブーケを腕と体の間に
はさみ、毛皮のコートからたばこを取り出し、紅い唇にはさんだ時だった。
パシッ・・
リリカの斜め後ろで、小さな稲妻光線が走った。
「ここは喫煙禁止なのですが。
私は、ここの管理者でサリエルと言います」
細身の男、しかも、黄金に赤い
メッシュが混じる髪を、後ろで束ねている。
しかも腕組みをして、リリカの
すぐ側に立っていた。
「わわ、悪かったなぁ。すぐに出ていくから」
リリカが慌てて、たばこを外の通りに投げ捨て、逃げようとしたが、
細いピンヒールが、菩提樹の太く張っている根の間にはさまってる。
粘着テープにからめとられた虫のように、身動きが取れない。
それでも逃れようと、力ませに上体を傾けると、
片足の靴が脱げて、吸い込まれるように、サリエルの胸に百合のブーケと一緒に抱かれた。