緋色の徴(しるし) リリカとサリエル(魔法の恋の行方シリーズ11)
カツ、カツ、カツ・・

ヒールの音が、ガードのコンクリート壁に反響する。

「支払い!!足りなかったでしょう?!」

サリエルが走ってきて、リリカのバックの持ち手を、後ろからつかんだ。

「んだよぉ!!
その分、アタシが食ったし、飲んだからいいんだよ」

リリカが口を尖らして言うと、
サリエルは、数枚の千円札を差し出した。

「割り勘と言いましたよね。
負担をかけるのは、こちらとしても気分が悪いですから」

「まーー、どーしてもって言うんならさ」

リリカは、先ほどの大きながま口を取り出した。

「すごい、財布だね。
こんなの見たことがない!」

サリエルの驚きを無視して、
リリカはガマガエルのようながま口を、バカッとあけた。

「ああ、これは大魔女の認定で、師匠から受け継いだものだからね」

そう言って、
サリエルの手から千円札をひったくった。

「はぁーー!!魔女の認定って、そうなんだ!知らなかった!!」

サリエルはひどく、感心したように、がま口を観察していた。

「ところで、君のお気に召した天使はいましたか?」

サリエルが笑顔で言った。

「はぁ、アタシは関係ねーからな。んじゃ、もらっておくぜ」

「今日の君のスタイル、あの・・
お局(おつぼね)様っていうコスプレ?」
サリエルは、一歩近づいた。

「はぁ・・おめぇーなぁ・・」

リリカは顔を上げて、目を細め、自分より背の高いサリエルのネクタイをつかんだ。

「ボコるぜ。うぜぇーー」

「ああ、リリカちゃんって、バイオレンス路線の人?」

サリエルはうれしそうに聞いた。
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