緋色の徴(しるし) リリカとサリエル(魔法の恋の行方シリーズ11)

緋色の大天使サリエル

<緋色の大天使サリエル>
翌日の昼過ぎだった。

マンションの4階の廊下は、
お菓子の甘い香りが漂っている。

「なんか、アイツ、やべーよ。
天使と思えないよぉ」

リリカは興奮した口調で、
オーブンから、クッキーを取り出している、アレクサンドラに報告していた。

「よく、うちに来るけど、そんな感じじゃないよー。礼儀正しいし。
リリカのバックと靴も、届けてくれたじゃん?
ダーリンと同じ大天使だし、仕事できるし、見た目もいいよ?」

リリカは焼きたてのクッキーを、火傷をしないように指先でつまんで

「んだけどさ、性的指向って、
オトコ天使も色々だよ。
表からはわかんないものだし。
二人きりにならないとね。
縄で縛って欲しいとか、ヒールで踏んでほしいとか、鞭で打ってほしいとか、言いそうでさぁ」

「つまり、マニアックな変態野郎ってわけだ」

グルシアが、リビングの扉を開けて入って来た。

リリカはぴぃんと立ち上がり、
アレクサンドラは「おっかえりーーー!」と言って、抱きついた。

「こらこら、お客様の前で、ダメだよ」

と、グルシアは言いつつ、鼻の下と頬が緩んでいる。

「デへへへへーー」

アレクサンドラが、幼女のように甘えて、ベタベタしているのを見て

「やっぱ、アタシ、帰るわ」

リリカは、バックを持って言った。

新婚夫婦のいちゃいちゃを、
目の前で見せつけられても、正直、
面白くない。

「だめだよぉ、リリカ、話があるって言っていたじゃん。
ダーリンも、一緒にクッキー、食べようよぉ」
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