緋色の徴(しるし) リリカとサリエル(魔法の恋の行方シリーズ11)
「ダーリン、お願い。
話をちゃんと聞いて」

アレクサンドラがそっと、グルシアの腕に触れた。

「ニンゲン界で女の子を生んだ
魔女ちゃんたちは、結構心配している。
自分の娘が、魔女になりたいって言ったらどうしようかって」

リリカが、たたみかけた。

「あなたにとっても、他人事ではないでしょう。
あなたの娘がどうなるのか・・」

「こどもは・・女の子なのか・・」

グルシアがうめくように言った。

「ええ、魔女にはわかるのです」

リリカが、確信を持って答えた。

その昔、魔女は薬草を集め、産婆の役目をしていた。

多くの困りごとを持つ女性に寄り添って、生活をしてきた歴史がある。

天界もニンゲン界のオトコも、
そんな事を、気に止める事はなかった。

「だからこそ、早くに天界のご理解をいただきたいのです。
魔女たちが安心して、ニンゲン界で暮らして行けるように。
あなたの娘のためにも・・」

グルシアは腕組みをした。

もし、事実ならば、天界でも大きな方向転換となる。

「それでは、失礼させていただきますわ」

リリカはポンと猫の姿になり、
するりとその身をくねらせて、
ベランダの戸の隙間から出ていた。
< 29 / 52 >

この作品をシェア

pagetop