緋色の徴(しるし) リリカとサリエル(魔法の恋の行方シリーズ11)
「大天使会議にねぇ、自ら出張って訴えに来るのは、たいした度胸だよね。
その気持ちはわかるよ。
現在の魔界での魔女の地位は、
ダダ下がりだし」

サリエルの意見を聞いて、グルシアはうなずいた。

「俺としては、リリカ君の主張に、同意したいと思うのだが」

グルシアは、<娘のために>と
いう言葉を飲み込んだ。

「君もそれに同意してくれると、会議の流れができるのだが」

「アレクサンドラちゃんのため?」

「生まれてくる・・娘のためだ」

そう言って、グルシアは、苦し気に息を吐いた。

「ああ、そうなのか。
おめでとう。君もパパになるんだね」

サリエルは笑顔で、祝福するように手を差し出した。

「それならば仕方ないか。
僕としては、会議でリリカちゃんが困っている顔を見たいんだけどな」

グルシアは、<こいつはやはり変態かもしれない>と、考えはじめていた。

「僕が、リリカちゃんに
徴(しるし)をつけると言ったら、
彼女、メチャクチャ困るだろうね」

「いや、猫になって、速攻、逃げるだろうが」

グルシアは、怒り狂って暴れる
茶色の猫を想像した。

「そーなんだよねー。
彼女、逃げ足が速いんだよな」

本音か冗談かわからないが、
サリエルは、曖昧に笑って言った。
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