緋色の徴(しるし) リリカとサリエル(魔法の恋の行方シリーズ11)
リリカは体を傾けて、サリエルの頬っぺたに、少しだけ唇を触れた。

その瞬間、リリカの両手首がつかまれた。

「そんな子供だましはダメだよ!
ベロチューに、決まっているでしょぉ?」

サリエルの瞳は、炭の熾火のように、ほの暗く紅く燃えているようだ。

「僕の徴(しるし)がつけば、他のオトコとはできなくなるけど・・それでいいね?」

その声は、催眠術師のように、
耳元で深く響いた。

「別に・・別に・・それって
専属契約って?こと・・」

リリカの目が振り子のように、
揺れ動く。

思わずうなずきそうになったが、それに抗うように、
素早く、サリエルの緋色の翼の羽を一本抜いた。

「えっ?」

サリエルは一瞬、不意をつかれた顔をした。

「契約なら、証拠にこれ、もらっておくから。
もし、アンタが別の奴を好きになったら、この羽を使って呪いをかけてやる」

リリカは、サファイアブルーに金の線が入る瞳を細めて、
サリエルの目の前で、緋色の羽をクルクルまわした。

「契約とか・・そういうことではなくて・・」

サリエルは、先ほどの雄弁さは
まったくなく、言葉に詰まっているように見えた。
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