緋色の徴(しるし) リリカとサリエル(魔法の恋の行方シリーズ11)
「僕の羽なんか・・いくらでもあげるよ」

その瞳は、ほの暗い赤で、何か思いつめるような口調になった。

「実は・・僕は・・魔女に徴を(しるし)をつけたことが・・
まだない・・」

素のサリエルは・・

好きになった女の子を目の前にして、どうしたらいいか困っているオトコ天使に見える。

そう、彼はこういった状況分析ができ、知識が豊富にあっても、
体験がなくて・・

魔女を、無害化するために徴
(しるし)をつけること・・
そこで、お互いが<好き>という感情にすり替わる。

だったら、駆け引きは必要ない・・素直になればいいじゃないか・・

リリカは、大きく息を吸った。

「目ぐらいつぶれよ。恥ずいじゃないか。
それに、本当に好きな奴となら、ヘタクソとか、かんけーねぇよ」

リリカはそう言って、
サリエルの額(ひたい)を指で軽くつついた。

たぶん・・

こうなることを、自分もどこかで・・わかっていた。

「うん・・」

サリエルは、幼子のように従順に、目を閉じた。

まつ毛が長く、鼻筋が通り、唇の形もいい。
彫刻のように、完成された美形なんだけど。

まぁ、それでも・・・
リリカが、サリエルの唇に触れた瞬間だった。

ゴトン

エレベーターが動き出した。
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