緋色の徴(しるし) リリカとサリエル(魔法の恋の行方シリーズ11)

花嫁の呪い

<花嫁の呪い・後日談>
波が寄せては引いて、その単調な音が、また眠りをさそう。

開け放した窓からは、曖昧な海と空の境界が見えた。

レースのカーテンが微かな風に揺れるのを、ベッドで横に寝たまま、リリカは見つめていた。

もう昼近くなのに・・

隣でサリエルは、ぐっすりと眠りこんでいる。

シーツには緋色の羽が数枚、散らばっているのを、リリカは手に取り指でクルクルまわした。

昨夜、
サリエルの熱が、激しく注がれる度に、アタシが抜いたんだ・・

「さて・・」
これからすべきこと・・

まず、魔界に行って、天使の徴(しるし)が付いたことを報告しなくてはならない。

それから、荷物をまとめて・・
どこに行くか。

「花嫁の呪い・・か」

サリエルに、説明をしなくてはならない。
徴(しるし)がついたことで、呪いは終了した。

彼も、じきに目が覚めるだろう、

リリカは、サリエルが目を覚まさせないように注意して、額にキスをした。

するりとベッドから滑り降りると、
椅子に引っかけてあった男物の大きいバスローブをはおり、
バックと床に脱ぎ捨てた衣類を、素早くかき集めて、裸足でバスルームに向かった。

海に面した小さなコテージ、
サリエルが<隠れ家>と言っていた。

ニンゲンも魔物も天使も、ここにはほとんど来ないらしい。

この場所は、サリエルの資料室らしく、部屋に入りきらない本が塔のように何百冊も積んである。

本当に静かな場所だ。

リリカ、はシャワーのコックをひねった。

昨夜の愛は・・呪いのせいだった。

いや、徴(しるし)をつける行為に及んだのは、
アレクサンドラの仕組んだ呪いが、原因と言うべきか。

サリエルは・・それを知ったら、どんな顔をするのだろうか。
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