緋色の徴(しるし) リリカとサリエル(魔法の恋の行方シリーズ11)
次の瞬間、
サリエルに、お姫様抱っこされていたのだ。

「てめぇ、おろせよって!!」

「おろしたいのは山々ですがね。あなたは大魔女ですし。
しかし、怪我をしているので、
人道的な配慮、かつ、道徳的にも放っておけないでしょう」

リリカを抱き上げたまま、サリエルは、教会脇の小さな建物に向かった。

「こっちは物置なので、他の人は来ませんから。
取りあえず、応急処置だけはしましょう」

リリカは、顔を百合のブーケに埋めていた。

動揺して、赤くなっているのを、サリエルに見られたくなかったからだ。

物置の脇にベンチがあり、リリカはそこで降ろされた。

「いいですか、ここで待っていてくださいね。保冷材と湿布を持ってきますから」

サリエルは、すぐに教会に入って行った。

「ちぇっ!なんだよ!!」

リリカは舌打ちした。

教会なんて、普段は絶対に来ない場所だ。

今日、ここに来たのは、大魔女のアレクサンドラの結婚式だったからだ。

とうとう、天使の徴(しるし)をつけられて、魔女を廃業することになった。

天使の徴(しるし)・・
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