緋色の徴(しるし) リリカとサリエル(魔法の恋の行方シリーズ11)
しかし、魔女の足のサイズや、
偏平足は、はたして弱みに該当するのだろうか・・

素朴な疑問を持ちつつ、サリエルは残った包帯やはさみをバスケットにしまいこんだ。

「裏門に車をまわします。整形外科に行きましょう」

「花が・・」

リリカは、ベンチの横に置いてある半分つぶれたブーケを見た。

「私が預かっておきましょうか?」

「いや、アレクサンドラに返してほしい・・」

リリカは、小さな声で言った。

「わかりました。では、待っていてくださいね」

サリエルはブーケとバスケットを持って、立ち上がった。

大魔女リリカは、膝に手をついて力なく、頭を垂れていた。

サリエルが車の鍵を持って、
ベンチに戻った時は誰もいなかった。

保冷材や湿布、包帯だけがベンチの上に散らばって置いてある。

石畳の地面にはヒールの折れた靴が転がっていた。

ふと、裏門を見ると、茶色の尻尾の長い猫が、後ろ足を引きずって、通りを歩いているのが見えた。
猫は一瞬、振り返って、サリエルを見たが、すぐに、植え込みの中にもぐりこんで、姿を消した。

「整形外科ではなく、獣医か。
ネコを入れるバスケットも必要だったな」

サリエルは、腕組みをして、
しばらく立っていた。

猫の毛はきれいな茶色・・
シナモン色だ。

それから、ヒールの折れた靴を拾い上げ、包帯や湿布もまとめて袋に入れた。

<魔女っておもしろいな>・・
サリエルは、独り言を言いつつ、教会に戻った。
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