【コンテスト参加作品】私が愛した人は、殺人犯でした。


「文哉……警察に相談したほうが、いいんじゃない?」

 そう言ってはみたものの、文哉は「警察なんてダメだ。……多分、何もしてくれないさ」と断る。

「でも……やっぱりこれは、文哉への復讐としか思えないよ」

 きっとこれを送ってくる犯人は、文哉を深く恨んでる人に違いない。
 じゃなければ、こんなふうにしてこないはず。もしイタズラだったとしても、これはイタズラの範疇(はんちゅう)を超えている。
 脅迫だって立派な犯罪なのに……。

「……こんなのに巻き込んでごめんな、杏珠」

「文哉……?」

 文哉は脅迫文を握りしめたまま、私に「俺は杏珠のこと、巻き込みたくないんだ」と言ってくる。

「え……?」

「ーーー俺たち、別れた方がいいと思う」

 その一言を聞いた私は、言葉を失った。

「……え、なんで?」

 なんで……そんなこと言うの……?

「このままじゃ、杏珠が危険な目に遭うかもしれないだろ?……そんなの、俺はイヤなんだよ」

「文哉……私は、絶対に別れないから」

「杏珠……なんで」

 私は文哉の手をぎゅっと握りしめると、「文哉の過去を、私も一緒に背負っていくって決めたの。……だから、私も逃げたくないの」と話した。
 
「杏珠……」
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