【コンテスト参加作品】私が愛した人は、殺人犯でした。


「懐かしいな……」

 文哉は家の中をぐるぐると歩きながら、引き出しを開けていく。

「文哉……?」

「あった」

 文哉は当時の自分の部屋から、卒業アルバムを取り出す。

「卒業アルバム……?」

「高校の時のだ。……アイツも載ってる」

 アイツって……まさか?

「これが俺だ」

「……若いね、文哉」

「十年前だからな」

 そりゃそうかと思いながらも、卒業アルバムを捲っていく文哉。

「……コイツだよ、俺が……殺してしまったのは」

 その人の顔を見て、文哉は唇を噛みしめる。

「俺は……ずっと後悔してた……」

「え……?」

「なんであんなことをしたのか、ずっと後悔してた。……今更後悔なんてしても、遅いんだけどさ。アイツの家族にも、悪いことをしたと思ってる。大切な家族を……奪ってしまったこと」

 文哉の後悔が、文哉の人生を変える。そのことに間違いはない。
 
「アイツもきっと……俺を恨んでるだろうな」

「……文哉」

 文哉のしたことは、確かに罪だ。でも……その罪をこんな形で償わせようとするのは、良くないと思う。
 こんな卑劣な行為、許せる訳がない。

「この卒業アルバム、持って帰ろう」

「うん、そうだね」
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