【コンテスト参加作品】私が愛した人は、殺人犯でした。


 文哉に電話を掛けるが、繋がらない。

「文哉……」

 お願い、出て!

 文哉たちを探していると、ついに二人の姿を見つけた。

「文哉……!!」

「杏珠……来るな!」

「え……?」

 そこには、文哉にナイフを向ける有澤ひらりの姿が映っていたーーー。

「有澤さん……やめて!」

「来ないで……!!」

 ナイフを握りしめたまま、有澤さんは文哉に近寄る。

「文哉……!!」

「杏珠、頼むからそこを動くな! 俺は大丈夫だから」

 二人の姿を見つめていると、有澤ひらりが、文哉に向かって言葉を放つ。

「高根沢くん……どうして? どうして、あの人を殺したの?」

「……有澤、頼むから、ナイフを下ろしてくれないか」

「イヤよ……!! 答えてよ!なんで殺したのよ!!」

 有澤ひらりは、文哉に怒りをぶつけている。

「なんで……なんで……」

「有澤……ごめん。本当に、ごめん……」

 有澤ひらりは文哉の言葉に耳を傾けようとはせず、文哉に向かって「どうして……どうしてよ!」とナイフを向け続けている。

「……殺すつもりなんて、なかったんだ」

「そんな言い訳、聞きたくないわ! なんで逃げたのよ……。なんでなのよ!!」

「有澤さん、やめてください!」
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