【コンテスト参加作品】私が愛した人は、殺人犯でした。
「俺の両親は……本当は事故で死んだんじゃ、ないんだ」
そう言われて私は「え……?」と文哉を見つめる。
「俺の両親は……本当は、自殺したんだ」
「え……。自殺……?」
「俺の両親は、多額の借金を抱えてたんだよ。……毎日借金取りが家にやってきて、両親に金返せって言ってきたんだ。でも必死で返しても、借金は全然返せなくて……挙句、両親は俺を残して自殺した」
そんな悲しい過去を聞いて、私は何も言えなくなっていた。
文哉はどんな言葉を掛ければいいのか分からなくて、ただひたすら頭を回転させるけど、何も言えない。
「そんな……ことが、あったんだね……文哉」
「両親が自殺する前……俺の友人は、俺の両親を侮辱した。借金を抱えて生きているって知った途端、俺たち家族を侮辱して、嘲笑ったんだ……。貧乏だった俺のことを、アイツはずっと腹の中で笑っててたんだ。俺に同情するフリをして、本当はずっと俺のことを見下してたんだって気付いて……」
文哉は私に、ずっと言っていた言葉があった。
【世の中は、金が全てじゃない。金がなくなって、根性があれば割と生きていけるんだって気付いたら、なんか楽になった】
それはきっと、文哉なりの生き方から生まれたものかもしれない。