【コンテスト参加作品】私が愛した人は、殺人犯でした。
文哉は私の隣に腰掛けると、「俺には、杏珠しかいないと思ってる。 この先もずっと、俺には杏珠だけだって、そう思ってる」と私の手を握る。
「だから杏珠には……言ったほうがいいと思った。例え嫌われたとしても、例え軽蔑されたとしても……杏珠には、ちゃんと言おうと決めたんだ」
これが文哉の本当の気持ちだと知っても、私は文哉の顔をまともに見ることが出来なかった。
どんな顔をしてあげれば、いいのか分からなかったから。
「杏珠……俺は、友人を殺したんだ。でも、怖くて自首することは出来なかった。……あの時の俺は、俺は何も悪くないって、俺は被害者だって、勝手にそう思ってたんだ。 だから……警察に行くことなんて、考えてなかった。もし自首したら……俺はきっと、自分の人生を苦しめることになる。そう思ってたんだ」
「文哉……っ」
「十年前のあの時、確かに俺の人生は変わってしまった。……俺が全てを、変えたんだ」
文哉の過去や、文哉の人生なんて、私には全部は分からない。 でも……今の文哉は、変わった。
罪の意識があって、それを変えようとしてる。私には、そう思えたんだ。
「こんな俺だから、杏珠には嫌われたとしても仕方ないと思ってる」