【コンテスト参加作品】私が愛した人は、殺人犯でした。
私はそんな文哉の手をぎゅっと握り返すと、文哉にこう声を掛けた。
「文哉……辛いこと話してくれて、ありがとう」
そんな私の言葉に、文哉は「え……?」と私を見る。
「ずっと……辛かったよね。こんなに辛いこと、抱えて生きるの、辛かったよね……?」
文哉は涙目になった目で、私を見つめ「杏珠……」と名前を呼ぶ。
「ずっと……辛い思い、してたんだね。気付けてあげられなくて、ごめんね」
文哉の告白に、本当にびっくりしてるし、どうしたら良いのか分からないでいた。
けどやっぱり、私は文哉のことを好きだから。文哉の全てを、受け入れる覚悟でいる。
文哉の全てを愛する覚悟で、私は生きていくことを決めた。
「……怒らないのか、杏珠」
「びっくりはしてる。……でも、文哉は悪くないよ。あれは事故なんでしょ? 事故なら、文哉は悪くないと思う。……文哉のことを侮辱したその人も、悪いと思うから。人のことを傷付けて侮辱したんだから、その人の方がもっと悪いと私は思う」
こんな考えの私も、悪いのかな……。確かに人を殺すことは悪いこと。それは犯罪だ。
だけど、文哉のことを、文哉の家族のことを侮辱する方も悪いと思う。それだって、人を傷付けることだから。