【コンテスト参加作品】私が愛した人は、殺人犯でした。


「文哉は……ずっとこのことを隠して生きてきたんだよね。誰にも言えなかったの、すごく辛かったと思う。 でも……私に言うことだって、勇気がいるはずだから、相当迷ったと思うんだ。 それは、私のことを考えてくれてのこと……だったんだよね?」

「……杏珠」

 私は文哉か殺人犯だと聞いた。殺人は悪いことだ。
 でも、文哉の人生は文哉のものだから。文哉の人生に、私が口を出すことなんて出来ないんだって分かった。

「確かに、文哉が過去に罪を犯したことに間違いはないかもしれない。 でも……その罪を背負って、ずっと生きてきたんでしょ?……だったら、これからもその罪の重さを、文哉には絶対に忘れないでほしい」

 私の言うことがおかしいのか、それすらも私には分からない。 でも、文哉の過去は決して消えることはないし、消すことすら出来ないのもまた事実だから。
 その罪をずっと背負って生きてきた文哉のことを、私は決して責めることなんて出来ない。
 私には責める資格も、ないかもしれない。

「杏珠……ごめんな。ありがとう……」

「私……文哉には、幸せになってほしいって思ってる」

 文哉が例え辛い過去に苛まれたとしても、幸せになってほしいって思ってる。 
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